2020年5月21日木曜日

【レビュー】『災害に強い住宅選び』(長嶋修、さくら事務所)


7都府県に緊急事態宣言が発令されてから1ヶ月以上が経過しました。子供たちは休園・休校、大人は子供の面倒を見ながら初めてのテレワークを行う状況が続いています。

そんな中、コロナ禍は家と人の関係を深く考えるきっかけとなりました。

ワーカホリックな会社員だった人の中には、家は平日に寝に帰る場所から、テレワークで生産効率をどう高めていくかというところに意識が向かっている人もいるかもしれません。(テレワークでは仕事にならないという人たちも逆に実は増えていますが)

子供がいる世帯では、広く、日当たりがよく、庭のある一戸建ての良さを感じるようになったという声が私の周りでも聞かれるようになりました。

「都心+駅近」という呪縛から自由になれば、立地面では住まいの選択肢は格段に増えます。

もちろん、この状況やマインドが将来も続くかどうかは分かりません。東日本大震災後にもその機運が高まりましたが長続きはしませんでした。

しかし、テレワークでも問題ないことが証明された業種では、この体制が常態化することも考えられます。(毎日ではなくてもテレワークが推奨され、その分、オフィスをスリム化して固定費を下げる)

そこで、住まいと家族を考えるきっかけになる書籍を何冊かこれから随時、紹介していこうと考えております。第1回目はさくら事務所・長嶋修さんの新刊『災害に強い住宅選び』です。

『災害に強い住宅選び』

長嶋さんは最近ではテレビでもよく見かけるようになりました。さくら事務所は、個人向けの不動産コンサルティングを担い、ホームインスペクションなどで実績のある会社です。

先ほど私は「都心+駅近」という呪縛を離れれば選択肢が広がるという話をしました。

もちろん、住まい選びには資産価値が重要ですし、駅近の価値が今後も落ちることはないでしょう。

しかし、必ずしもそこが自分らしく&家族らしく暮らすために100%ふさわしい場所という保証はないわけです。

ところが、自分が好きなところに住むべきかといえば、それはやはり災害に対する強度もしっかり考えていかないといけない。そのために一人ひとりが何に注意して、何をすべきかを分かりやすくまとまっているのが本書です。

2019年の台風15号と台風19号では多くの家屋が被害を受けました。地球環境が改善せず、温暖化が進むと同様の災害が発生する頻度が高まると想定されています。

こうした状況下でハザードマップを作成する自治体が増えており、本書によれば岡山・広島・愛媛での河川氾濫や土砂災害ではハザードマップと被害がおおむね一致したととのこと。

しかし、兵庫県立大学の阪本真由美氏のアンケートによれば、ハザードマップの存在を知っていたのは75%に達していたものの、内容を理解していた人は24%にとどまっているというのが現状のようです。多くの人は被害を楽観視していた現状があるとのこと。

とは言うものの、私たちにとって何を基準に住まいをい選べがいいのか?マンションと一戸建てのメリットデメリットはなにか?いまから被害を最小限に抑えるための事前対策は?もし、被害にあった場合の事後対策はあるのか?

住まいのプロでないと、住居選びのポイントなんてすぐに思い浮かびません。

しかし、必要最低限の知識と注意を持つだけでも、納得いく住まいに少しは近づける。100%安全な住まいはないと思っていますが、リスクがあったとしてもそれを事前に想定して対策できていれば心に余裕が生まれます。ついついデザイン優先で選んでしまい、あとあと後悔するというような実例もあるようですので注意が必要です。



私は2013年に池袋近郊から鎌倉市内に居を移しました。二人目の子供ができてから割とすぐの頃です。ノマドが家を買って根を下ろしたわけですが、中古マンションをフルリノベーションをして、家族に合った環境を手にしました。

これまでは、郊外に家を買うのは、予算がないから仕方なくということが多かったように思います。地方に移住する人も増えましたが、仕事を考えるとそう簡単にはいかなかいというのが本音でしょう。それでも、コロナ禍が進む中で、本当に今の住居が家族の幸せにつながるのかを考える切っかけになった人も

住まい購入を考えていて、具体的な地域や物件が頭に浮かび始めた頃に読んでおきたい一冊です。