2011年3月11日金曜日

【書評】クラウドHACKS! 同期と共有でラクチン・ノマドワークスタイル

結論から言うと、クラウドハックというよりも「アウトプットハック」の方がしっくりくるような一冊でした。

クラウドHACKS! ―同期と共有でラクチン・ノマドワークスタイルクラウドHACKS! ―同期と共有でラクチン・ノマドワークスタイル
小山龍介

東洋経済新報社  2010-12-03
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『クラウドHACKS』は小山龍介さんのHACKシリーズの最新刊。昨年12月に発刊されたものをようやく手にして読んでみました。約250ページと読み応えがありますが、セクションごとに細かく区切られて読みやすい。目次を見て興味があるところから読み進めても多くを吸収できるでしょう。クラウドに関心があるけど、本をじっくり読む時間がないという方にもおすすめです。

ただ、クラウドに関心があるなら、本書で紹介されているサービスはひと通り知ってるという方が多いかもしれません。この点に関しては賛否両論あるようですが、サービスの内容や利用の仕方に関して、ベーシックなところを確実に押さえておくというのが今回の趣旨のようにも感じます。

クラウド化によって仕事のリアルタイム化、働く場所の自由化=ノマドワークスタイルがもたらされたという認識のもと、集合知の活用法、独自のインデックス読書術、クラウドコラボレーションなどの方法が具体的に紹介されています。小山さん自身が、様々なガジェットやウェブサービスをどのように使いこなしているかが分かります。単にサービスの紹介で終わるのではなく、実際に小山さんが利用していることが感じられて好印象です。


そのテイストがガラリと変わるのが第6章。
ここから一気に引きこまれていきます。

アウトプットにつなげるために、集合知によって集められたバラバラな情報をいかに統合していくか?

それが「小山流アウトプットハック」の問題意識です。
集合知は私たちに多くのものをもたらしてくれますが、新しい意味の構築や、創造的なアウトプットには向いていません。そこは、一人の革新的な個人の能力がなせる技。そのための方法論を説いたのが第6章です。

意識化されたものを書きだしてロジカルに情報を組織化するのではなく、無意識の領域から引っ張り出すようにして書き出していく方法論が紹介されています。『クラウドHACKS』の執筆でも実践された方法でもあるようです。ロジックを外したところでアウトプットする「プライベートライティング」という手法や、Twitterを活用した方法で既存の要素の間に新しい意味を作り出すやり方が具体的に紹介されています。


本書の続編で、アウトプットに焦点を当てて、さらに深堀をしてほしいと感じました。

現代の社会ではクラウドによってノマドワークを実践する環境が整いつつあります。
しかし、ともすればクラウドを活用することや、ノマドになること自体が目的になりかねない雰囲気もこの社会にはあります。その意味では、アウトプットにつなげるために、クラウドを利用し尽くしている小山さんのスタイルから学ぶことは多いです。

もちろん、著者のように皆が物書きになれというわけではありません。アウトプットの内容は人それぞれでしょう。肝心なのは、アウトプットすることによって自分がどうなりたいのか、そして自分を取り巻く社会にどういうインパクトを与えたいのかを、問題意識として持ち続けることなのかもしれません。


クラウドHACKS! ―同期と共有でラクチン・ノマドワークスタイルクラウドHACKS! ―同期と共有でラクチン・ノマドワークスタイル
小山龍介

東洋経済新報社  2010-12-03
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Chapter1 データハック
      クラウドライブラリーとインデックス読書術
Chapter2 情報収集ハック
      エージェント活用と情報の自己組織化
Chapter3 ノマドワークハック
      遊牧とヨソモノ感覚
Chapter4 クラウドタイムハック
      クラウド時間とライフログ
Chapter5 クラウドチームハック
      プロセス管理とチーム連携
Chapter6 アウトプットハック
      アウトプット集中力と「天才」への道
ChapterX クラウド手帳ハック
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